19年間行方不明の女性、野生化して発見

カンボジア北東部のラタナキリ州で、言葉をほとんど話せない裸の女性が保護された。9歳の時に行方不明になった女性とみられ、19年もの間、密林で生活していたらしい。名乗り出た家族と一緒に暮らし始めたが、新しい生活に困惑した様子だという。

先週末にそれなりに騒ぎになったニュース。テレビでも盛んにやってた。

カンボジアが船籍以外でここまで日本のニュースにのるなんてあまり無いし、大好きなラタナキリの話なんで、いっちょ詳しい記事でも書こうと思っていろいろ調べてたんだけど、途中であほくさくなってやめた。

カンボジアデイリーじゃねーか元記事。東スポだ。
なんかの宣伝だろ、なんて意見もあったけど、そんな高尚なものですらないレベル。そういや数年前にもカンボジアで犬が猫を産んだとかいうニュースがあったな。
なんでこんなネタが外電にのってんだろ。

しかも、わからないならわからないままのほうがミステリーが広がるのに、くだらない余計な情報までいろいろ出てる。例えば、
・おなかがすいたと的確なジェスチャーをする
・カラオケVCDコレクションに興奮
どこが野生だよ。
おまけに、発見された時点でショートカットだったらしいじゃん。

百歩譲ってほんとの話だとしよう。うん、ほんとの話だ。そういう女性は実際に見つかったんだ。
でも決定打がこちら。

「しかし、話している言葉は意味が不明で、コミュニケーションが取れない」

え?しゃべれないんじゃなかったの?
念のため英語のソースも確認。

No clues have emerged from the woman herself, who can speak but shows no signs of being able to talk in any intelligible language.

しゃべってるじゃん。
しゃべってるけどこちら側に理解できる人間がいないってことだろ。
おそらく別な少数民族グループだよ。

この舞台になってる村は、ラタナキリ東部のオーヤーダヴ地方。ほとんどベトナムといってもいい場所で、ジャライ族が多く住む地域だと思うんだけど、少し西に行くとクルン族・タンプオン族・ラオス系の村が混在していて、南部にはプノン族、山を越えるとベトナム系の少数民族が割拠してる場所だ。

ちゃんとした通訳つれてこいよ。

まあ無理矢理なにかをこじつけようとするとだね、カンボジアは戦後15年くらいでしょ。日本で言うと昭和30年代から40年代あたりよね。だいたいの町の雰囲気とか生活の様子もそんな感じで共通点あるよね。復興が進んで高度経済成長に乗りつつある時期というか。
そういう時期にこういう話が出てくるってのは、社会学的にいろいろあるんじゃないかなー。時代の複雑化とか不透明さとか不安とか。晴れやかなオリンピックから複雑でグロテスクな大阪万博へ向かってる時期だったり、ウルトラQとか怪奇大作戦とかだったり。カンボジアもいまそんな時代のような気がする。
横井庄一さんは40年代後半だっけ?

後日追記:
彼女が本物かどうかなんて実はどうでもよくて、いまのカンボジアにこの話が存在すること自体が何かを表してるよなー。

ところで、別な情報見つけたので補足。

But she does not react in any way to a handclap behind her head and there could be a simpler explanation — that she is deaf and dumb.

うーん、こうなるとちょっと解釈も変わってくるし、いろんな部分で納得。
カンボジアの山奥、特に閉鎖的な少数民族の村社会で、障害者がどういう扱いされてるか考えると、いろいろ複雑だな。この話も違う方向に拡大していきそう。
犬が猫を産んだときも、神秘的なものとしてお布施の対象として金を集めるのが目的だったみたいだし。今回も、かなりの見物人が集まってて、彼女の足元にはお金を入れるための皿が置いてあるらしいね。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です