産油国カンボジア

石油とカンボジア、一見まったく関連のなさそうな繋がりだが、ここのところカンボジアの海で相次いで油田が確認されていて、カンボジアではちょっとした石油フィーバーが巻き起こっている。
かつてシアヌーク前国王自身も森林違法伐採が問題になったとき「石油の出ない小さなサハラ砂漠」と発言したことがあることからわかるように、カンボジアにとっては正にふって沸いたような話だ。

数年前からどうやらカンボジアの海に石油が埋蔵されているらしいと噂され、日本の三井石油開発株式会社も参加して調査を続けていたのだが、結果、思いのほかしっかりとした油田が確認されたようだ。
現在調べが済んでいる一部のブロックを見積もっただけでも、カンボジアのGDPがいきなり倍増するだけの石油が生産できるという。

それがほんとなら、現在最貧国のひとつであるカンボジアだが、石油のおかげでインフラ投資も加速し、国の財政も潤って問題となっている公務員の給料も正常化し、教育も経済も急速に発展し、アジアや世界経済にまで好影響をあたえることになるだろうと予測される。

カンボジアの人々にとっては実にめでたい話で、採掘はまだまだ先の話なのにすでにガソリンの値段が急落してるというのもわからないではない。
しかし、カンボジアの本当の状況を考慮に入れると、手放しで喜べるものでもないのだ。むしろこの石油のせいでカンボジアの状況が悪化する懸念も大いにある。俗に「資源の呪い」と呼ばれるものだ。

カンボジア政府が石油の利益の67%を得ることになるは間違いない計算だ。しかし、それがカンボジアの人々まで降りてくるかというと、どうだろう。
政権維持のために非合法な手段を使って国際的に非難されたこともある現政権。内戦の時にベトナム軍の侵攻によってできた政府がそのまま今のカンボジア政府だ。はたして、ざくざくと振ってくるオイルマネーをカンボジア人民のために使ってくれるだろうか。

実際ナイジェリアをはじめ、オイルマネーが人々を逆に苦しめている国はいくつもある。
おまけに、今回のような海からの採掘だと、掘ってから売るまで一切カンボジア本土に関係しなくてもよく、周辺の特需さえ見込めない可能性もある。
政府だけが丸々太って、いままで以上に国民に関心を払うことを無くし、人々の暮らしは余計厳しいものに、なんてことも十分ありえる。
それだけではない、もしこの石油をめぐって紛争が起こったりなんかしたら。

カンボジアの石油が実際にマーケットに流れるのは3~4年後だという。カンボジアの総選挙は2年後。現ベトナム傀儡政権がどんな手を使ってでも次の選挙を勝ち抜くのは、ほぼ間違いなさそうだ。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です